それから10数年が経った初秋。
シノブから連絡があった。
「旦那が戻る前までならいいよ」
稲毛の浜の入口で彼女と彼女の娘を拾った。
「少しだったらドライブ、大丈夫だろ?」
出張の代休の晴天の日。
車は江戸川を渡り、東京湾の中ほど、若洲に来ていた。
「こんな所、高校時代にはなかったよね。稲毛の浜くらいはあったけど」
「埋立地の果てにあった夢の島がずっと内陸なんて、うそみたい」
親子3人のように岸壁に沿って歩いた。
「都心に程近い、埠頭の岸壁。正午前に汽笛を聞いた夢を見て
詩を書いて、冬休みの交換日記したの覚えてるか? 今、そんな光景だね?」
「そういえば、結婚しましたハガキに映ってた奥さん、電車で見かけたわよ。綺麗な方ね。」
シノブが結婚してから、音信不通。そして、彼女の実家に送った結婚しましたハガキが
彼女のもとに転送され、少しのやりとりがはじまったのだ。
「あと少しで旦那を迎えに行かないといけないけど、どこかでお茶しようか?」
「じゃあ、どこがいい??」「舞浜?」
「うーん子供がだだこねるから、幕張かな?」
応援団とチアリーダーだった高校1年。秋に出会い、春に別れた。
自然消滅だと思っていた。 大人になることはつらいことだ、と身に染みた。
高校3年の文化祭でバンドは盛況、校内人気投票3位になったシノブが後夜祭ステージ後に
飛びついてきた。「感激したわ!これからも友達でいて!」
人波にもみくちゃにされそうな中、何が起きたのがわからない、学園祭の終わりだった。
会話もかわせなくなったシノブと、学校の廊下であいさつするようになったこと。。。。。
ふと、我に返ると、ホテルの喫茶で彼女の育児の話を聞いていた。
「じゃあ、これで帰るけど、なんであのとき終わってしまったか知ってる??」
「え??」
「あのね、あの時 あなたのお母さんが、私に電話をかけてきたの」
「何の用で??」
「うちの息子は、あなたの学科と違って大学に行かせなくてはいけない。
だから、勉強するために、お付き合いは終わりにしてください、って言ったんだよ」
「え???? そんな事を・・・」
「あ、こんな時間。じゃあ!」
彼女を見送って、向かったのは茨城の竜ヶ崎。
休暇だったが、取引先の工場への大型車の通行許可を取らないと間に合わないのだ。
稲毛の浜から16号、木下街道、利根川を渡り、竜ヶ崎に入ったときは日が傾いていた。
定時で閉庁という、警察署に頼み込んで、ぎりぎりで発行してもらった3台分の通行許可。
浦安の家に戻ったのは夜9時過ぎだった。TVのニュースが流れていた。
「9月も今日で最後。明日から衣替えですね・・・」
忘れられない 最初のダブルデートと同じ9月30日だった。
光と影が織りなす季節。 Carol Kingの名曲を Michael McDonaldが歌い上げる。
Michael McDonald "Hey Girl"
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by i-coast
| 2010-09-29 00:42
| nature